*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語








いつのまにか訪れた夜も更け、東の空には宵闇月がのぼってきていた。







露草、藤波と共に、汀は検非違使たちに護送されて、東二条殿に戻ってきた。







その門のところで、右大臣邸の御門守たちに引き渡される。






しずしずと渡殿を行き、北の対に向かう途中。







「………ねぇ、あなた。


お名前は何というの?」







汀が藤波に小声で話しかけた。






黙って俯いて後に付いてきていた藤波は、唐突な問いかけに驚いたように目を上げた。






汀の青い瞳がきらきらと見つめているのに気がつき、辟易しながらも答える。







「…………藤波」







すると汀がぱっと顔を輝かせた。








「…………まぁ! なんてきれいな名前!



春の藤花が風に揺れる、鮮やかな薄紫色が目に浮かぶわねぇ」