*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

舎人が指したのが誰なのか、見ればすぐに分かった。





高貴な美貌と、美しい立ち姿。






「ーーーこのお方を、探しておられたのか」





「………そうだ、頼む、このままお逃がししてしまったら、どうなることか………」






その言葉に、検非違使たちは色めき立った。







「……たしか、右大臣殿の姫君といえば」




「ああ、そうだ、今お邸におられるのは、このたび春宮殿下に入内される六の君さまーーー」







不穏な空気に気づき、汀は駆け出そうとした。





しかし、時すでに遅し。





背後から迫っていた検非違使たちが、汀の周りを取り囲んでしまった。






(…………あぁ、逃げられない)







市女笠の陰で、汀は絶望の表情を浮かべた。