*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

そして汀の顔を覗き込み、手を出す。






「ほら…………早く行くぞ」






まだぼんやりとしている汀の手を、灯がつかもうとした瞬間。












「ーーーーー動くな! 射るぞ!!」









ざわついている人々の後方から、鋭い声が飛んできた。







灯と藤波がはっと振り向く。







馬に乗って近づいてきたのは、検非違使(けびいし)たちであった。






都の治安を司る彼らは、東の市で突如起こった騒ぎの報告を受けて、大勢で飛んできたのである。







人々は黙って道を開け、検非違使の集団を通した。