*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

彼らが気がついたときには、すでに地にうち伏していた。








「………………」








あまりにも圧倒的な素早さに、見ていた誰もが声すら出なかった。







四方八方から向けられる視線を気にする素振りもなく、灯はひょいと跳んで、山となって倒れている男たちを飛び越えた。






そして、汀の目の前に立つ。








「…………よくもまぁ、余計な世話ばっかりかけてくれたな」







低い呟きと不機嫌そうな目線に、汀は呆然と目を丸くする。








「ーーーーー蘇芳丸?



ほんとに、蘇芳丸なの?」








すると灯は顔を顰めて見せた。







「何を間抜けなことを言ってるんだ。



そんな余裕はないぞ」







目を瞠ったまま動かない汀の懐から青丹丸が顔を出した。





灯に気づいて吠えようとしたが、灯は唇に人差し指を当てて制した。