*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

ーーーーーその時。











「………汀!!」










よく通る低い声が、市の喧騒を通り抜けて、汀のもとへと届いた。






露草にも男たちにも聞こえなかったが、汀の耳にははっきりと聞こえた。









「…………蘇芳丸?」







小さな呟きを聞き、露草は汀に目を向けた。







「…………姫さま?」








汀は笠の下で、さっと周囲に視線を巡らせた。







(ーーーーーどこ?



どこにいるの? 蘇芳丸…………)