*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

幼い頃から白縫山を駆け回って育った灯たちは、都の男たちなどより断然足が速いはずである。




しかし、男たちとの差は、なかなか縮まらなかった。





往来を行く人々が邪魔になっているのである。






しかも、ものものしく武装した男たちの集団に人々は驚き、すぐに道を開けるのだが、その後をなんだなんだと追って行くのである。






集まった野次馬たちを押し分け押し分け、灯たちは進まねばならなかった。








「…………ちっ」







灯は苛立ったように舌うちをして、不意に足を止めると身体を低く屈みこませた。





跳び上がって屋根に飛び乗ろうとしているのを感じ、藤波が慌てて灯の腕を引いた。