*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

汀と露草は身支度をととのえるため、奥の間を借りた。





壺装束にするため、汀はゆっくりと市女笠を外し、懐から出てきた青丹丸にかぶせた。






着替えの最中、瞳の色を見られないようにと、できるかぎり目を伏せていたのだが。






店主の老人はその不可思議な仕草に興味を引かれ、こっそりと汀の顔を盗み見た。






その瞬間、思わず息を呑む。





見たこともないほどの肌の白さと、その顔立ちの高貴さに、驚いたのである。






一目で、貴族の姫君がお忍びで来たのだと分かった。






老人はしばらくの間、目を奪われたように汀を見つめていた。





そして、伏せられた瞼の奥にある瞳が、不思議な光を放っているような気がして、首を捻る。







しかし、そんな老人の様子に気づくこともなく、汀と露草は支度を終えると、一言礼を言って店を出て行った。