(………このひとがその盗賊かどうか、なんて分からないのに、露草の不安は、すこし行き過ぎのような気がするけど)







六の君は溜め息を吐き出す。







(でも………この心優しい少女は、私のことを本気で心配してくれる、数少ない味方だわ)








六の君は表情を和らげ、露草に向き直る。







「………ありがとう、露草。


その忠告、しかと胸に秘めておくわね」








片目を瞑ってそう笑いかけてくれた六の君に、露草はほっとしたように頭を下げた。







「もったいなきお言葉にございます」








その時、北の対と寝殿とをつなぐ渡殿から、複数の足音が聞こえてきた。




中腰になって外を確認した露草が、六の君に耳打ちする。







「薬師が参りましたようです」






「あら、案外、早かったわね」






「それはもう……。

右大臣のお邸からのお呼び出しでございますれば、薬師は大急ぎで参上しますわ」






「まぁ。それじゃあ、父上に感謝しなくてはね」







六の君と露草は顔を見合わせて微笑んだ。