*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「…………こんな人混みの中に来るなんて………」






藤波は市の様子を眺めながら、またも呆れ返った表情になった。






「六の君は、いったい何を考えてるんだろう?



どうしたって人目を引いてしまう容姿なんだから、すぐに気づかれて、密告されてしまうに決まってるよ」







青い瞳だけが問題なのではない。




いかにも高貴そうな、傷一つない細い指、玉のような肌や顔立ち、立ち居振る舞い。




それらを見れば、庶民の女たちと見まごうはずなどない。




一目で貴族の姫だと知れてしまうだろう。






藤波の言葉に、灯も溜め息を洩らした。







「………なんにも考えてないに決まってるよ。



ただ単に、楽しそうだから来てみただけなんだろう」







灯の読みは当たっていた。