六の君の、汚れを知らぬ清廉な言葉に、露草は疑り深い自分を恥じ入るような心持ちになる。





しかし、やはり不安は払拭しきれない。








「………あの、わたくし、その者が盗賊であると、決めつけるわけではございませんが……。



ですが、あの、………『白縫山の火影童子』といえば、世にも珍妙な、燃える火の如き深緋の髪の持ち主だと、もっぱらの噂なのでございます。



そして、その者の髪は、この世ならぬ紅………。




やはり、その者こそ、火影童子なのではーーー」








控えめながらも確信ありげな露草の声に、六の君は溜め息を吐く。





そして、暗い塗籠の中へひっそりと足を踏み入れ、男の顔をまじまじと覗き込んだ。








「………ふふ、大丈夫よ」








六の君が穏やかな表情になる。




露草が「え?」と訊き返すと。








「ねぇ、見てみて? 露草。


この人の顔を。



ちょっと汚れはついてるけど、あどけない少年のような、純粋な寝顔だわ。




それにね、とてもきれいな、澄んだ瞳だったのよ………。



こんな顔の、そんな瞳のひとが、他人のものを盗んだりするわけない。



ーーー私はそう思うわ」