*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「お父君のために………。



ひいてはお母君のために、春宮さまに入内なさるのだと、あれほど強くおっしゃっていた姫さまが………。




そのように、ここからお逃げになるとおっしゃったということは。




お父君に対して、ご不信の念を抱かれたということでございましょう?」








的を射た露草の言葉に、汀はこくりとひとつ頷いた。





露草はさらに続ける。








「………この前、姫さまのお話を伺ってから、わたくしなりに考えたのです。



殿が………お父君が、姫さまのお母君のお世話をされているというのは、まことなのかと。




わたくしは、そのようなお話は聞いたことがございませんでした。




不思議に思いましたので、下仕えの者にも少し調べさせたのです。




それで分かったのですが、殿が今も世話をなさっているのは、ご嫡男をお生みになられたご正室の御方だけでございました。




………つまり、姫さまは、お父君にたばかれておられたのです………」