*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「ひっ、姫さま!


にげ、逃げるというのは、どういうことでしょう!?」








狼狽に目を白黒させる露草に、汀はあっけらかんと笑いかけた。








「あら、逃げるは逃げるよ。




私は、この邸から逃げるの。



そして、もう、父上とは関係のないところで行きていくの」








「…………………」








あまりにも突拍子もない言葉だったが、汀の決意が固いことは、露草にはすぐに分かった。





周りが止めたところで、その心が変わることはないだろう。







露草はしばらく硬直したままだったが、ゆっくりと姿勢を元に戻した。






いつもの露草らしい、奥ゆかしく控えめな居姿に戻ったときには、その心も定まっていた。