*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

不意に下から飛んできた石がしたたかに顎を打ち、灯は仰け反るようにして枝から落下した。





本能的に空中で体勢を整えると、くるりと回って着地する。






「……………檀弓」






目の前に仁王立ちになっている檀弓を見て、灯が声を洩らした。







「………あんたねぇ、灯。


どんだけぼんやりしてたら気がすむわけ?


あと何日? 何ヶ月? いや、何年?」







「……………すまん」






険しい表情で言われ、灯は殊勝な様子で立ち上がった。






「おねーさんが聞いてあげるわよ!」





「…………は?」





「恋の悩みはねぇ、人に話したほうがすっきりするんだから!」





「……………」






灯はぴくりと眉を上げて、無言のまま村とは反対方向へと立ち去った。