「父上は今でもちゃんと、お母さまのご様子をうかがいに行ってくださっているみたい。



きっとお母さまも喜んでいらっしゃるわ………。




だからね。



私はお母さまのためにも、父上のお望みの通りの娘にならなくちゃ。



春宮さまに入内することが、父上のおためになるのなら、それは私にとっても、お母さまにとっても、喜ばしい限りなのよ」







「……………そうですわね」







露草はやっとのことで得心した。





汀は、母のためにこそ、従順に父の兼親にお仕えしているのだ。





気の進まないはずの入内も、母のために受け入れたのだ。







そのことを知ってしまうと、露草はもはや何ひとつ、口を挟むことはできなかった。