*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

喜びに浮かれた兼親は、汀の動揺に気づくはずもなく。






「かくなる上は、お前の身のまわりの支度を急がねばならぬな。



女御としてふさわしい装束も揃えねばならぬし、内裏に持ち込む調度も、他の女御たちに見劣りするものであってはいけない。



さぁ、忙しくなるぞ」






「……………ええ」






汀は無意識のまま父の言葉に答えた。




しかし、兼親がそわそわとした様子で立ち上がるのを見て、はっと我に返った。






「あっ、あの、父上」




「ん?」





突然に呼び止められて、兼親が不思議そうに振り向いた。






「…………あの、母上は………。


わたくしの母は、わたくしの入内のことを、御存知なのでしょうか」