*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「六の君よ。


嬉しい話があるぞ」






兼親の浮かれた声音に、汀はそこはかとない不安を覚える。





「………なんでしょう、父上」





「お前の入内の日取りが決まったのだ」





「…………え」





あまりに唐突な話だった。




汀はごくりと唾を呑み込んだ。



掠れた声を励まして、父に問う。






「………もう、決まったのですか」




「あぁ、異例の早さではあるがな。


春宮殿下のたってのお望みなのだ」





「……………いつなのですか」





「三日後の、宵闇月の日だよ。


この日ならば、日柄も良好だからな。


婚儀は後回しにして、とにかくお前をお手元に迎えたいとの仰せだよ」





「……………」






汀は言葉もなく顔を伏せ、膝の上で握り締めた手を見つめていた。