*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………では、なぜ………。



わたくしにお話ししてくださらなかったのですか。



もしお話しいただいていれば………姫さまのお心を、お慰めすることができましたのに………」







泣きそうな声音で紡ぎだされた露草の言葉に、汀が驚いたように目を見開いた。





「まぁ、どうして泣くの? 露草」





露草は首を横に振る。





「泣いてなどおりませんわ、姫さま。


ですが………わたしくは、寂しいのです」






「寂しい………?」






「………差し出がましいことは重々存じておりますが。


わたくしは、姫さまの最も近くでお仕えしている者だと自負しております。



…………ですのに、姫さまは、お心のうちを、わたくしに少しもお話ししてくださいません。



このたびの春宮さまのことだけではなく、これまでのことも………。



姫さまは、ご自分のことを、わたくしにはお教えくださらないではございませんか」