*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「ーーーーいらっしゃったのよ、ここへ」





「……………え」





「ーーー望月の晩に…………」





「………………」





何も知らされていなかった露草は、驚きのあまり声も出なかった。





「…………え、えぇと、それって、つまり…………」





どう言葉に出せばいいのか分からず、露草は口ごもってしまう。






「………えぇ、そうですわよね………。


姫さまは、春宮さまの女御として入内されるのですから………当たり前といえば、当たり前の………。



いえ、でも、入内なされる前に春宮さまが直々に見えるなんて………。



あまりにも突然の、あまりにも異例の………」






露草の動揺を見てとった汀が、慌てたように手を振る。






「あっ、でも、未遂なのよ、未遂!


結局、春宮さまは夜のうちにそのままお帰りになったから………」