*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………なんだ、群雲か………。



びっくりさせるなよ………」






その言葉に、今度は群雲がぱちぱちと瞬きをする。






「…………お前をびっくりさせたのなんて、初めてかもしれんなぁ。


お前はいつだって、何十歩も前から誰が近づいてきてるのか気付いてたからな」






「……………」







灯は答えず、再び沢の方へ視線を戻した。






「………灯、お前、一体どうしたんだ?



最近ずっとぼんやりしっぱなしだって、檀弓が心配してたぞ?


なにか、あったのか?」







「…………べつに………」






灯は無表情のまま答える。





しかし、何もなかったようには、どう見ても見えない。





群雲が表情を曇らせた。