*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

沢へと降りる険しい小道を進んでいると、鮮やかな緑の中に、燃え立つような紅緋がちらついた。






「おーい、灯!!」






近くの樹につかまり道を下りながら、群雲は声をあげる。




しかし、その紅緋色は微かな反応さえ見せなかった。






(………檀弓の言ってたのは、どうやら本当らしいな)






群雲は、沢のほとりの大きな岩の上に腰かけている灯の、すぐ背後まで近づいた。






「ーーー灯?」






何気なく肩に手を置くと、灯はびくりと身を硬直させ、機敏な動作で振り返った。





そして、目を瞬かせながら群雲の顔を見上げる。