*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

藤波と楪葉が村へ向かって歩いていると。





「………あれ?」





楪葉が声を上げた。




視線の先には。


お気に入りの樫の樹の根元にぼんやりと佇み、爪先のあたりを見ている灯がいた。





「………なにやってんだろ、灯」




「………さぁ?」






藤波と楪葉が顔を見合わせる。





どれだけ近づいても、灯は二人に気づいた素振りもない。




目と鼻の先まで行き、「灯?」と呼びかけると、驚いたように目を上げた。






「………ああ、お前たちか」






呟くように灯が言った。






「珍しいね、灯。


こんなに近くまで来たのに気づかないなんて………」