*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

北の対の横の庭を通り、邸の外へと向かう途中。




侵入者の捕物は男たちに任せ、噂話に興じる女性たちの話し声を、灯の耳が捉えた。





「………現れたのは、どうやら火影童子らしいですわよ」




「まぁっ、火影童子っていうと、西の白縫山の?」




「なんでも炎のような赤い髪をしているとか………」




「そうそう、世にも恐ろしい、残酷な盗賊ですって!」




「そういえば、一月ほど前にも噂を聞きませんでした?」




「ああ、そうそう、東二条殿に火影童子が現れたと、ずいぶん男たちが騒いでいましたわね」




「あぁ、そういえば! お聞き及びになりまして?」




「まぁ、なにを?」





女たちの噂話は、徐々に矛先を変えていく。




灯はそれを、聞くともなく聞いていたのだが。