*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

何食わぬ顔で走り出した灯は、常人には目にも止まらぬ速さで、仲間たちのいるはずの寝殿へと向かう。





ひと気のない寝殿では、仕事を終えて金目の物を詰め込んだ風呂敷を背負った白縫党の面々が、物陰に身を潜めて待っていた。





「灯、ご苦労さん」



「そっちこそ」





小声で労いの言葉をかけてきた群雲に、灯は微かに笑い返した。






「………武器を持った衛兵たちが、すぐにこっちに来るかもしれない。


急いで出よう」






灯が真剣な面差しで言うので、皆は頷いた。




灯は唇の前に指を立てて皆を黙らせると、邸の中の音に耳を澄ませる。





釣殿の方からこちらへ向かってくる足音に気がつき、皆を反対方向へと導いた。