*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯は白梅を連れて、築地に貼りつくようにして、塀の中の音を聞く。





黒松の報告通り、物音も人声もないようだった。





ときおり、見回りの衛兵が通り過ぎる足音が聞こえたが、いかにも眠たげな、警戒心の欠片も感じさせないものであった。






(ーーーこれならいけそうだな………)






そう心中で独りごち、白梅を振り返る。




黙って合図をすると、白梅も頷いた。





衛兵の足音が近くにはないことを確認すると、灯は身を低く屈めて、高く跳び上がる。




築地の頂点に一瞬だけ片足を着き、そのままの勢いで邸の塀内に飛び降りた。






白梅は築地の壁の凹凸に手をかけ、よじ登る。




なんとか頂点に辿り着くと、音を立てないように用心して飛び降りた。