*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「灯、問題ないか」




群雲が夜空を仰ぎながら言う。





灯は一人、馬に乗らずにいた。



背の高い樹々の枝をひょいひょいと飛び渡り、付近に異常がないか、旅人や商団などが近くにいないかを上から確認しているのだ。





「………あぁ、大丈夫そうだ」





視覚と聴覚、嗅覚を普段よりさらに鋭くさせて、灯は地面を駆ける仲間たちに声をかけた。




楪葉はこそこそと卯花に話しかける。





「ね、灯って、なんであんなに身軽なのかな?」





「………さぁねぇ。


きっと前世の行いが良かったんじゃない」





「ふぅん? かっこいいね!」





楪葉はにっこりと笑いながら、月を背に飛び回る灯の影を見上げた。