*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

露草は汀の肩を抱きながら、慌てたように御簾の向こうに声をかける。






「ーーー恐れながら、殿………。


姫さまはお加減が優れないようでございます」





「なんと!」






兼親はおろおろと狼狽する。




芳正も心配そうに唸った。






すると汀は、蒼白な顔を上げ、弱々しく答える。







「………父上、大納言さま………。



申し訳ございませんーーー。




わたくし、あの………喜びのあまり、心の臓が早鐘のようにーーー。



少し、お休みさせて頂きとうございます………」






それだけを囁くように言うと、汀はふらふらと身体を傾かせた。







「姫さま、褥へお移りくださいませ。



お手伝いいたします」






兼親と芳正は顔を見合わせた。






「………分かった、露草よ。



六の君を頼んだぞ。




この話の続きは、また今度にしよう」







「………ありがとうございます………」






汀は小さく呟いた。