*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

傍らに控えていた露草は、艶やかな黒髪に隠れて表情の見えない汀を、じっと見つめている。





「ーーー姫さま………?」





御簾の向こうには届かないように、小さく声をかける。




汀は応えなかった。





側に丸くなっていた青丹丸も、心配そうに近づいてきた。







「………姫さま、どうなされました」





露草は衣擦れの音を立てないようにそっと膝行し、汀の前に移動する。




その顔を覗き込むと。







「…………姫さまっ!!」





露草は甲高い声を上げた。





汀の顔が、白粉の上からでもはっきり分かるほどに、色を失って蒼ざめていたのだ。






露草の鋭い叫びに、兼親は驚いたように中腰になった。





「どうした、露草!」