*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「大納言どのが皇室に深い関係をお持ちであることは、お前も聞き及んでおろう」




「ええ………」





焦らすような兼親の言葉に、汀は露草から教えられた公卿たちの系譜を思い浮かべる。





「………たしか、大納言さまの御妹君が、紫香殿の女御さまとおっしゃいましたか。


帝のお妃さまとして、入内なさっておられましたね」




「そう、その通りだ。


その紫香殿の女御さまが、男宮をお生みになられていることも存じているか」




「ええ。今の春宮(とうぐう)さまーーー皇太子殿下でございますわね」




兼親が満足気に頷く。




「そうだ。

つまり大納言どのは、春宮さまの伯父君であられるのだ」




「ええ………」





汀は兼親の言葉の意図が分からず、曖昧に相槌をうつだけだ。