*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「六の君さま、お変わりございませんか」




その声に、汀は驚いて目を丸くする。





「まぁ、そのお声は………。

大納言さまであられますか」




「さよう、さよう。

よくぞ覚えていてくださった。

光栄の至りですな」





まだ灯がいたころに北の対まで訪ねてきた、大納言の大槻芳正であった。





(………いったい何の御用なのかしら)





汀は首を傾げるが、黙ったまま座っている。




すると兼親が、いつになく機嫌の良い声で語りかけてきた。





「六の君よ。


以前話した、喜ばしい報告を持ってきたのだよ」




「………まぁ、何事でございましょうか」




汀はなぜか不安を覚えながら答えた。