*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

母屋に戻って来た汀は、膝の上で疲れて眠る青丹丸の頭を撫でながら、しみじみと呟く。






「………青丹丸ったら、本当に可愛い。


あーんしても食べない、枝も取ってきてくれない、身体も素直には洗わせてくれない、どっかの誰かさんとは大違いね。



きっと青丹丸は、私に黙っていなくなったりは、絶対にしないわね」






誰のことを思っているのか、露草にはもちろん分かっていたが、あえて答えずに静かに控えていた。





「………姫さま、そろそろお父君のお見えになるお時間ですわ」





露草が控え目に声をかけると、汀は顔を上げた。





「あぁ、そうね。


着替えをしなくちゃね」





「お手伝いいたしますわ」





「あら、ありがとう。


じゃあ、支度をしてちょうだいな」