群雲は首を傾げながら、なおも言い募る。





「………お前、犬はどうした」





「………は?」





「小桃が言ってたぞ。


お前、朽葉丸の子犬を育てることにしたんだってな」





「…………」





「青丹丸とか言ってたか」





「…………」





「どうしたんだ、連れてったんじゃないのか」






しつこく訊ねてくる群雲に、灯は嫌そうに答えた。





「………犬を欲しがってる奴に心当たりがあったから、あげたよ」





「………ほう?」






誰に、などという野暮なことを訊いてこない群雲の気遣いが、灯にはありがたかった。





「きれいな半月だな………」





夜空に浮かぶ七日月を見上げる灯を、群雲はしかし怪訝そうに見つめていた。