*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………ふぅん。

なぜ世に知られていないんだ」





灯が不思議そうに首を少し傾げた。




「そりゃぁ、決まってるさ」




群雲は自分の目の辺りを指差す。




「………目の色のせいか」




灯は微かに目を見開いた。




「ああ、もちろんさ」




群雲は頷いて語り始めた。




「その六の姫君ってのはな。


右大臣殿が、それなりに由緒正しい家柄の側室に産ませた姫君らしいんだが………。


珍妙な瞳の色のせいで、母親の実家で『異形の子』として疎まれたらしくてな。



それで、数年前に右大臣殿の邸に引き取られて。


今は北の対の奥深くに隠れるように、ひっそりと暮らしている、という話だ」




「………ふぅん」



灯は物思わしげな表情で唸った。