*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

群雲が不貞腐れたように酒を煽っていると。




灯が「あ」と小さく声を上げた。





「………なぁ、群雲」




「ん? なんだい」





群雲が軽く眉を上げる。





「………お前さ。


水色の目をしたお姫さんの話なんて、聞いたことないよな」





珍しいことにどこか照れくさそうな様子で訊ねてきた灯に、群雲は目を丸くする。





「………なんだい、そりゃ」




「あ、いや、知らないならいいんだ。

別に、大して気になってるわけじゃないし……」





灯は気まずそうに指先で鼻をこすった。



群雲は驚いたような表情のまま、軽く首を横に振る。





「いや、知らないわけじゃないんだ。

ただ、なんでお前が急にそんなことを訊いてきたのかと、不思議に思ってな」




「なんだ、知ってるのか」





灯は眉を上げて群雲を見た。