「蘇芳丸!!」






突然、汀の叫びが聞こえた。




灯は驚いたように、築地の上から庭を見下ろす。






「…………お前」






灯の小さな呟きを、藤波は聞き逃さなかった。





灯らしくない動揺の気配を感じ取り、思わずその視線を追う。





視線の先で、薄花色の瞳が真っ直ぐにこちらを射ているのに気がつき、藤波は目を瞠った。






(………なんだ、この瞳の色は………?)






驚きのままに向けられた藤波の視線にも気づかず、汀の瞳は灯だけを見つめていた。







「…………蘇芳丸、またなの!?」






「…………?」






「また、私に知らせずに………消えるつもりなの!?」







汀が築地に駆け寄り、真下から必死の声で言葉をかけた。





灯は眉間に皺を刻み、怪訝そうな顔をする。







「………はぁ?


いったい、なんの話だ。



また、とはどういうことだ?」