*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「…………きれいな朝焼け。


でも、こんなお邸の中にいては、朝日の昇るところが見えないのが、残念ね」






「……………」







「………あぁ、もう長いこと、日の出を見ていないわ」







「……………?」







「昔はよく裏山にのぼって、東の山の端から昇る日を見ていたのだけど」







「……………」








汀の声には、どこか寂しそうな色が滲んでいた。






築地塀の向こうの、今は見えない日の出を夢想するように、目を細めて首を傾げる。






愁いを感じさせる汀の姿を見て、灯は唐突に立ち上がった。







「あら、どうしたの? 蘇芳丸」







汀が不思議そうに見上げる。





灯は黙って汀の腕をとった。







「…………え?


え、なぁに?」






「……………」