*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

時は夜半もすっかり過ぎて、東雲(しののめ)も近い刻限である。





東の空高くに、薄黄に輝く細い月が浮かんでいる。






「じきに、朔月ねえ………」







糸柳のような月を眺めながら、汀は独りごとのように呟いた。







「もうすぐ、朝月夜(あさづくよ)も終わってしまうわね」






「……………」







「あら、朝月夜って、有明の月のことよ」






「……………それくらい知ってる」






「あら、ごめんなさい。ふふふ」







汀は可笑しそうに笑みを零した。







「ねぇ、蘇芳丸」






「……………」






「あなたは、どんな月が好き?」






「……………は?」







汀に問われて、灯が首を傾げる。







「だから、あなたは、どんな月が好き?


朔月? 望月?」







「……………」







「それとも、三日月や眉月?」







「……………考えたこともない」








灯は小さく呟いた。