*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

がっくりと脱力した灯は、黙って立ち上がった。





そして、そのまま帳の中から出ようとする。





汀は慌てて夜着をはねのけ、起き上がって灯の袖を引いた。







「蘇芳丸!!」





「……………」






灯はぎろりと汀を見下ろす。






「ちょっと待って、蘇芳丸」





「…………なんだ」





「ねぇねぇ、本当なの?」





「…………はぁ?」






にこにこしながら見上げてくる汀に、灯は首を捻る。






「私のこと、心配してたって!!」





「……………」





「ねぇねぇ、私のことを、心配してくれたの?」





「…………聞き間違いだろう」






灯は冷たく言い放ったが、そんなことで諦める汀ではない。







「そうなの? 蘇芳丸ったら。


ふふふ、まったく。


素直じゃないんだから」







「………聞き間違いだと言ったろう」







「あら、寝起きだからってばかにしないでちょうだい。


いくらなんでも聞き間違わないわよ。


私、寝ぼけてないもの」







「………お前は、年がら年中、寝ぼけてるようなものだろ!」







「んまー、失礼ねぇ」








そんな言い合いをしながら、汀は灯の手を引いて母屋から廂へと出た。