*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

汀は目を瞬かせながら、掠れた声で小さく呟く。







「……………なぁんだ、蘇芳丸ーーー」







その瞬間、灯は不愉快そうに眉間に皺を刻んだ。







「…………おい、お前」






「…………?」






「…………なんだ、とはなんだ」






「…………え?」







押し殺したような低い声に、汀がぱちぱちと瞬きをする。







「…………ひとがせっかく心配してやってるのに………。



なんだ、とは、失礼な奴だな!」







灯は苛立ちに任せて、汀の顔を軽くつまんだ。







「………びっくりするじゃないの」







目を丸くした汀はそう言って、にこっと笑った。