*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

塗籠の中で耳を澄ませていた灯は、とうとう堪えきれずに起き上がった。





そろそろと妻戸を開き、外の様子を確かめる。




人影がないことを確認すると、灯は塗籠を出た。





母屋は格子も御簾も下ろされており、闇に包まれている。



格子の隙間から洩れてくる微かな月の光だけが頼りだった。




しかし夜目のきく灯には、調度の輪郭を見てとることができる。






衣擦れの音が聞こえてくるのは、御帳台の中からだと分かった。




灯は音を立てないように帳を開いた。