*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

一人残された塗籠の中で、灯はふぅ、と溜め息を吐き出した。





ごろりと仰向けになって褥に寝転がり、手枕をして天井を眺める。







(…………………疲れた………)







普段からは考えられないほどにたくさんの言葉を喋ったため、まるで山を走り回った後のような疲労感に襲われている。








(…………なんというお姫さんだ。



信じられない阿呆だ。



あんな貴族など、見たこともない)








いつの間にやら、完璧に汀のペースに呑み込まれてしまっている。








(……………調子が狂うなぁ、本当に………)








白縫山にいたころの自分が、どんな風だったのか、灯は思い出せなくなってきた。