*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「ほら、蘇芳丸。


食べてみて。


本っ当に美味しいから!」








醤の赤茶色がごちゃまぜになった中に、潰れた雉肉と鰯が散乱している不気味な強飯。




灯は無理やり渡された器を持ったまま、蒼ざめた顔で見つめる。






明らかに気が進まないらしい。





汀が不満そうに唇を尖らせた。







「食べないの? 蘇芳丸」






「……………」






「美味しいのに」






「…………………」






「あっ、もしかして。


あーん、してほしいの?」






「…………………馬鹿か、お前は」








そんなことをされては堪らないと、灯は意を決して箸をつけた。






かすかに震えているようにも見える手で、口許へと運んでいく。






酢の香りがつんと鼻をつき、口に入れるのが戸惑われたが。





真横できらきら目を輝かせている汀に威圧される。






すぅ、と大きく深呼吸をしてから息を止め、灯はやっとのことで茶色い物体を口に含んだ。