*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

汀は上機嫌で、黒々とつやめく漆器をとりあげる。





漆塗りの箸を持ち、蒸鮑の切り身を箸にとった。







「はい、蘇芳丸。あーん」






「……………」







灯は差し出された箸をすげなく無視し、自ら自分の分の漆器をとりあげた。







「………ま。つまんなーいの」





「……………あほか」







灯は飄々とした様子で食事を口に運ぶ。






膳の上には、蒸鮑と煮海老だけでなく、他にも高級な料理が並んでいた。




かがやく白米の強飯(こわいい)。


蕪と水葱(なぎ)の羹(あつもの)。


雉肉を細かく刻んだ膾(なます)。


塩漬けの鰤の切り身と、干した鰯。


糠漬けの茄子と胡瓜の香物。


牛乳を煮詰めて作った酥(そ)。


粳米(うるちごめ)に甘葛(あまかづら)を加え、胡麻油でからりと揚げた唐菓子。