優が自己紹介をしている間、私はじっとそんな彼の顔を見つめていた。


簡単な自己紹介をしている優は、もう私の方も雄馬の方も見ていない。


快活そうに話をする優を見て、なんだか涙が出そうになって私は慌てて顔を伏せた。


人生で一番幸せだった、あの懐かしい日々を思い出して。





「……のう、……かのう……おい、叶柚子」



名前に体が反応し、思わず顔を上げた。


すると、教卓のそばに立つ優が私を真っすぐ見つめていた。


……えっ?


驚いた表情の私に、優の隣に立つ先生が再び名を呼んだ。



「叶、ちゃんと席の場所確認したのか? お前の席はもうひとつ後ろだぞ」



そう言って先生は黒板に張っていた名簿表を私にかざして見せた、



「そこの席はこの表だと空白になってるはずだが。名前順で柏木をそこに座らせる予定だったからな」



私が今座っている場所……名前が空欄になっている名簿表を指差した。