「あー……」
きっと彼氏がいるから遠慮してくれてるんだよね……?
でもバイト先の先輩と、友達としてごはん食べに行くくらいいいよね?
「……いいですよ」
そう言った途端、勉さんは白い歯を剥き出しにして少年のように笑った。
「俺、叶さんの連絡先知らないから、教えてくれる?」
「あっ、はい」
私は鞄からケータイを取り出し、お互いの連絡先を交換した。
今度は事前に連絡するよ、と言って勉さんはバイクに股がり去っていった。
その後ろ姿を暫くの間見つめ、やがて私は気合いを入れて踵を返す。
両親の待つ家に帰るために。