「……がっは……」



だけど、おかしい。



「やめっ……」



お義父さんの様子がおかしい。


私を殴りながら罵っているはずなのに……。



「……っが……」



漏れ出す吐息がいつもと違う。


苦しく喘いでいるように聞こえる。


それに、その声も心なしか少し遠くて、殴られてる時の筋肉や骨がぶつかり合う鈍い音も微かに聞こえる程度。


感覚が鈍っているせいなのか。


それともーー。



その真意を確かめようと、私は涙で腫れた瞼をゆっくり持ち上げる。


目を開ける事がこんなに大変な事だとは思わなかった。


重く、水分で弛んだ瞼。


開けたらそこに待つのは只々痛みと恐怖の世界だ。


それでも私は目を見開く。


そんな世界を受け入れる覚悟があるわけでもない。


だけど、痛みや恐怖と一緒になって捨ててはいけないものがある。


やっと……やっと、あの頃の優や雄馬が帰ってきたんだ。


楽しかった日常が帰ってきた。


それだけでも私にとっては……。


ううん、それだけで私にとってはこの世界を受け入れる理由になる。



ーーそう思って、私は目を見開いた。