金魚すくい



微かに聞こえた。


幻聴でも何でも、いい。


優の声が、聞こえたんだ。


心配そうに、すごく声色が低くって……。



「……お前っ!!」


「……っ!」



もう声にならなかった。


お義父さんは私の右手ごと、掴んだ何かを破壊した。


……いいや、“多分”破壊したのだろう。


右手の骨がみしみしと軋む音と共に、そのすぐ下で何かが私の手を刺していたから。


怒り狂った様子のお義父さんが、私の髪を掴み、人形のように力の抜けた私の体を思い切り壁に打ちつけた。



ーーガシャン。



何かが割れる音がした。


きっと下駄箱の上にあった花瓶が割れたのだろう。


あれ……ママが気に入っていたのにな……。


相変わらず雷音が脳内で響き、痛みに耐えながらもそんなことを冷静に考えている自分がいた。


しかし涙で歪んだ世界が突然、白く雲がかかったように滲みだし、私を別世界へと誘おうとする。



お義父さんが何か汚い言葉で私を罵っているけど、それもやがて聞こえなくなった。





ーーああ、死ぬ時って……あっけないものなんだね。





自分は死ぬんだ、とそう思った。


そう思って私は、意識を手放したーー。