ーーバシィッ……。



家に入ってすぐだった。


乾いた音が乾いた廊下で鳴り響く。


その音は私のすぐそばで響き、同時に無数のウジ虫が私の頭から全身へ駆け抜けるような、ぞわりとした痛みが走った。



「お前……アイツらに何か言ったのか?」



こめかみをヒクつかせ、握り締めた手には太い血管が幾本も走る。


歯をギリリと歯ぎらせ、倒れた私を見下ろしてーー。


その瞳には妙な力を感じる。



ーー怖い。



彼は冥府の番人だろうか……。


いいや違う。


それよりももっと怖い存在だ。



「いっ、言ってない……私、言って……」



ドスン。


鈍い音が背中で響き、



「ーーっか……はっ……」



その衝撃で、息が出来ない。