「柚子」



背を向けた私の右手を、そっと掴む手。



「……優?」



真っ黒な瞳。


何もかもを飲み込む小宇宙……そんな無限な広がりが垣間見える、優の澄んだ瞳が私を真っすぐ捉える。



「なにかあったら、連絡して。いつでも何時でもいいから」



言った後、今度はお義父さんを見やる。


凛とした表情で。


どこか挑みかかるような視線を投げて。


……そして、ギュッと力を込めて私の手を掴んだ。


火傷のある右手。


その痕が少し疼いた気がして。



「わかった」



何も考えず、言葉は口を突いて飛び出していた。


その言葉に、優の顔はほころんだ。



「ーー約束、だからね」