少しの間でいい。
たくさんの幸せは望まない。
たった、このひと時だけでいい。
そうすればまた、私は笑っていられるから。
これからも、ずっとーー。
だけど、それは本当にほんの一瞬だけだった。
学校を出て、家まで向かう帰り道。
相変わらず2人は言い合いをしながら、そんな2人を止めに入る私。
とても楽しく、和やかな時間。
……だけど、家に着くほんの数百メートルのところで、幸せの時間が終わりを告げた。
「柚子」
その声に、私の幸せが影を潜める。
目の前にあったものがふっと消えた。
幸せの幻影を見ていたように。
霧が晴れて、現実がクリアになって目の前に現れたように。
「お、義父さん……」
夕日に照らされて、お義父さんの表情は影をつくる。
笑顔を作っているのは分かるが、それには影が差していた。
「柚子……?」
はっ、と現実に戻してくれたのは優の声。
そうだ、今ここには2人がいる。
ーー隠さなければ。
「あっ、優は……っていうか雄馬も会うのは初めてだったよね」
誰って顔してお義父さんを見やる雄馬と、私の顔を覗き込む優。
特に優には今朝の事もある。
これ以上気づかれてはいけない。



