金魚すくい



優の頭に抱きついたまま、ひとしきり泣いていた私に、



「……柚子」



ずっと静かに立ち尽くしていた雄馬が口を開いた。


同時に私の肩を優しく叩いて。



「柚子がそんなに抱きついたら、コイツ窒息死しちまうぞ」



声の口調がとても穏やかで、思わず涙いっぱいの顔で振り向いた。



「はっ、ひでー顔だな」



そう言った雄馬の顔には怒りというものが一切、消えていた。


鋭い瞳は少しばかり充血して輝いている。




ーーそう言う雄馬だって、ひどい顔してるじゃない。



溢れてくる涙を制服の袖で拭うが、再び私の瞳からは涙が溢れ出した。


それはさっきとは違う、温かなもの。



ううん、ひどい顔なんて嘘。


ホントはとってもいい顔してる。


この10年間で一番の顔だーー。